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ワコールがアジア5ヵ国でEC基盤を刷新、Shopifyで各国を横断分析し改善サイクルを加速

ワコールは、世界70以上の国と地域でインナーウェアを展開するグローバルブランドです。近年はアジア事業の強化に注力し、東南アジア5ヵ国(ベトナム、香港、シンガポール、フィリピン、マレーシア)で共通のEC基盤を整備するプロジェクトを進めています。

急成長するアジアEC市場に対応するため、日本が主導してShopifyのPlusプランを採用し、機能性向上とコスト削減を両立した新たなEC基盤の構築を進めています。2025年にベトナム、香港で導入。今後、シンガポール、フィリピン、マレーシアへと開発を進めている段階です。

各国データを共通基準で比較できるようになったことで、改善施策の精度が高まり、CVR改善や運用効率化といった成果が早くも表れています。

【Shopify Plus導入による成果】

  • ランニングコストを半分以下に削減
  • ベトナムECサイトのCVRが約40%改善
  • ベトナムECサイトの新規購入者比率が約7割に上昇

今回は、東南アジア5ヵ国のプロジェクトをリードするワコールホールディングス グローバル本部 中国・アジア課長を務める原雅史氏に、Shopify導入の経緯やその成果について話を伺いました。

株式会社ワコールホールディングス グローバル本部 中国・アジア課長 原 雅史 氏

アジアで高まるEC需要、日本主導でプロジェクト始動

アジア市場でのEC強化を本格的に検討し始めたのは2018年。当時、アジアではオンラインシフトが加速し、ワコールでもブランド価値を自らの手で届ける「自社EC」の重要性が高まりつつありました。

一方で、国ごとにECの成熟度や体制には大きな差があり、特に現地の小規模法人では構築や運用にかかるコスト負担が重く、持続的な展開が難しいという課題を抱えていました。こうした状況を踏まえ、日本本社が主導してアジア5ヵ国に共通するEC基盤の整備に着手。各国が自律的に運営できる仕組みをつくるプロジェクトが動き出しました。

「アジアでのECは、まだ成長余地が大きい。私たちが先行して成功モデルを築き、それを各国へ波及させていく。その起点となるのが、このプロジェクトです」と、原氏は語ります。

ワコールホールディングス グローバル本部 中国・アジア課長 原 雅史氏

しかし、ECサイトの運用を進めるなかで様々な課題が早い段階で浮き彫りになっていきます。当時EC基盤として採用していた外資系のエンタープライズ向けECプラットフォームは拡張性がある一方で、専門知識が求められる点で大きな負担が伴いました。さらに、各国法人には十分なEC運用ノウハウが不足していたため、機能を使い切れないまま運用コストが増大。結果として、持続的な運営のハードルが高まっていきました。

「ECプラットフォーム自体に大きな問題があったわけではありませんが、専門知識がないと運用が難しい状況でした。現地の体制やリソースを考えると、もっとシンプルで扱いやすく、現地チームが自走できる仕組みが必要でした」(原氏)

ShopifyのPlusプランへ転換後、3〜4ヵ月で新サイト構築

こうした状況を受け、同社は2024年に、ShopifyのPlusプランへのリプレイスを決定し、各国のECサイトの段階的なリニューアルに着手しました。採用の決め手は、「運用のしやすさ」と「ランニングコストの削減」の2点になります。

「Shopifyは操作が直感的で、構築もスピーディなことが大きな魅力でした。初心者でも1日あればサイトを立ち上げられると言われるほど扱いやすく、各国法人の自走を後押しできると感じました。さらに、以前のプラットフォームと比べて運用・保守コストを半分以下に抑えられる見通しが立ったことも大きな決め手でした」(原氏)

ShopifyのPlusプラン限定で、1つのアカウントから複数のECサイトを構築できる「追加ストア」機能を活用し、共通の構造を複製しながら各国ストアの構築を進めました。開発パートナーにはShopifyのPlusプランを利用した海外開発知見を持つトランスコスモス社を選定し、テーマ設計からアプリの選定まで包括的な支援を受けることで、要件定義からリリースまで各国およそ3〜4ヵ月という短期間で実現しています。順次開発を進め、2025年11月時点ではベトナムと香港のShopifyへのリプレイスは完了しています。

ワコール ベトナムECサイト

アジア各国を横断分析、共通指標でグローバル運営を実現

サイト構築を進める中で、アジア5ヵ国での展開を見据えた運営体制の標準化にも取り組みました。「追加ストア」を活用し、Shopify上でブランド共通のテンプレートを設計した上で、各国の文化や商習慣に合わせてローカライズすることで、「共通性」と「柔軟性」を両立した運営体制を実現しています。

「これまで国ごとに異なる環境で運用していましたが、Shopifyでは共通テンプレートをもとに国をまたいだデザインの統一性を確保できる上、簡易なシステム構成のおかげでローカライズ対応も柔軟に行える点は魅力的だと感じています。ベトナムと香港で構築したモデルをベースに、シンガポール、フィリピン、マレーシアへと順次展開しています」(原氏)

また、Shopifyの継続的なアップデートも大きな後押しになっています。以前は国ごとにしか閲覧できなかった管理画面が、最近のアップデートにより複数国のストアを一度に横断的に比較できる仕様となり、グローバルでの一元管理がさらに容易になっています。

さらに、Shopify導入により、各国のEC運営体制には大きな変化が生まれました。最も顕著だったのは、現地チームが自ら施策を実行できるようになったことです。これまでページ更新やキャンペーン設定のたびに外部ベンダーへ依頼していた作業が、Shopifyの直感的な操作性によって担当者レベルで完結できるようになりました。

「簡単なプロモーション設定やページ編集であれば、現地担当者がその日のうちに対応できます。これまで外部依頼にかかっていたコストや時間を減らせるようになりました」(原氏)

Shopifyの直感的な操作性に加え、以下の多彩な機能群が各国のEC運営を支えています。

■自動化を支える「Shopify Flow

カート離脱や購入後フォローなどの自動化フローを、現地チーム主導で構築しています。 「Shopify Flowは、当社にとって非常に魅力的な機能です。一般的なMAツールはコストが高く、現状の事業規模では導入が時期尚早だと感じていました。しかしShopifyでは、この自動化機能が標準で利用でき、メールツールとも手軽かつリーズナブルに連携できます。まずは基本的な施策からですが、自分たちの手で仕組みをつくり、小さな成功体験を積み重ね、今後の安定的な成長につなげていきたいと考えています」(原氏)

■共通指標で顧客を可視化する「ストア分析」

Shopify標準の分析ツールによって、各国の顧客データを共通指標で可視化できるようになりました。なかでもRFMカスタマー分析は見やすく、国ごとの状況を同じ基準で比較できる点が大きな魅力です。

「RFM分析を通じて、ロイヤル顧客の比率や複数回購入者の傾向などが国ごとに明確になり、次にどこを強化すべきかを考える起点になっています。たとえばロイヤル顧客をどう増やすか、複数回購入につなげるには何が必要か、といった検討がしやすくなりました。国によって顧客層や購買行動に差があるため、不足している層へのアプローチや、成果が出ている国の施策を横展開するなど、比較から得られる示唆も多いと感じています。分析の幅が広がり、今後にワクワクしています」(原氏)

■AIが運営を支援する「Sidekick AI

管理画面上でAIに質問できる機能「Sidekick AI」の試行も進行中です。分析ツールの操作補助やデータの見方をガイドしてくれるため、「まだ試行段階ですが、業務スピードを上げるうえで役立っています」と原氏は評価します。

機能向上とコスト削減を同時に、Shopifyで実現した進化

ShopifyのPlusプランへの移行は、ワコールのアジア5ヵ国でのECに大きな変化をもたらしました。開発スピード、運用コスト、そして顧客体験のすべてにおいて、短期間で大きな成果が実現しています。


【Shopify Plus導入による成果】

  • ランニングコストを半分以下に削減
  • ベトナムのCVRが約40%改善
  • ベトナムの新規購入者比率が約7割に上昇

特に目を見張るのが顧客体験の向上でした。ベトナムと香港でリニューアルした新サイトでは、ページの読み込み速度が大幅に向上し、購入完了までの導線もスムーズに。特にベトナムでは、カート遷移後の決済プロセスに「ワンページチェックアウト」を導入したことで、離脱率が目に見えて改善しました。

こうした成果は、具体的な数値にもあらわれています。ベトナムでは、CVRが旧サイト比で約40%改善し、新規購入者比率は約7割に上昇。同市場はワコールのブランド認知がまだ高くなく、競合も多い中での成果です。

「多くのソリューションは、コストを下げる代わりに機能を落とすか、機能を上げる代わりにコストが上がるかのどちらか。しかしShopifyでは、その両方を同時に叶えられた。これは本当にすごいことだと改めて感じています」(原氏)

次の成長フェーズへ──ワコールの新しい成長基盤

現在、同社はベトナム・香港に続き、シンガポール、フィリピン、マレーシアでもShopifyへのリプレイスを進めています。2026年度には、アジア5ヵ国すべてでの完了を目指しています。

「先行して立ち上げたベトナムや香港の成果を、他国にも展開していく予定です。Shopify上で共通のデータ基盤を活用しながら、顧客ごとの傾向を分析し、より精度の高いマーケティングに取り組んでいきたいと考えています」(原氏)

ShopifyのPlusプランへのリプレイスを経て、ワコールの海外EC事業は、まさに次の成長フェーズへと突入しました。共通基盤の整備によって土台を固めた同社は、今後各国で得られるデータをもとに顧客理解をさらに深め、長期的な関係づくりへと取り組みを広げていきます。

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