起業に成功した人たちには、自分らしい発想や経験を武器に一歩を踏み出したという共通点があります。
本記事では、テクノロジー企業や地域密着型ビジネスなど、さまざまな分野で活躍する15人のアントレプレナーを紹介します。それぞれの物語には、事業アイデアの見つけ方、初期の乗り越え方、成長のチャンスをつかむ方法など、多くの学びが詰まっています。自分に近いタイプの成功例を知ることで、あなたの起業のイメージもより具体的になるはずです。
サービス分野の起業成功例

堀江 裕介氏
堀江裕介氏は、大学在学中にdely株式会社(現・クラシル株式会社)を創業し、料理レシピ動画サービス「クラシル」を立ち上げました。
起業当初は別の事業で苦戦したものの、時代の流れを読み取り、料理動画という新たな分野に路線変更することで大きな成長を遂げました。使いやすいアプリ設計やユーザー目線を徹底したコンテンツ作りが評価され、クラシルは累計4,000万ダウンロードを超える人気サービスとなっています。
若手起業家としての柔軟な発想と行動力が、多くの起業志望者にとってのモデルとなっています。
村上 太一氏
村上太一氏は、早稲田大学在学中の19歳で株式会社リブセンスを創業し、成果報酬型の求人情報サービス「ジョブセンス(現マッハバイト)」を立ち上げました。
ユーザーが採用されて初めて企業から料金を得るという画期的なビジネスモデルが評価されて事業は急成長し、2011年には史上最年少で東証一部への上場を果たしました。学生起業としては異例の成功を収め、堅実な経営姿勢や社会に役立つ仕組み作りは、多くの若者にとって起業のロールモデルとなっています。
井上 佳央里氏
井上佳央里氏は、音声配信サービス「Radiotalk(ラジオトーク)」の創業者であり、音声コンテンツ業界を牽引する女性起業家です。
もともとは企業内の新規事業として立ち上げたプロジェクトでしたが、音声メディアの可能性に強い思いを持ち、独立してサービスを本格展開しました。スマートフォン一つで誰でも簡単に音声配信ができる仕組みを整え、パーソナリティの育成や収益化支援にも取り組んでいます。
ラジオ文化を現代風に再構築したビジネスモデルは、デジタルと情熱を融合させた革新的な事例として高く評価されています。
蜂谷 詠子氏
蜂谷詠子氏は、出産や育児による離職を経験したことをきっかけに、ウェブ制作スキルを習得し、女性向けの起業支援やコワーキングスペース運営を手がける株式会社BEEVALLEYを創業しました。
自身の体験を活かし、在宅ワークやスモールビジネスに挑戦する女性たちを対象に、実践的なサポートを提供しています。副業からのスタートでありながら、共感とニーズを的確に捉えたサービス展開によって事業を拡大しました。
家庭と仕事の両立を目指す多くの女性にとって、力強いロールモデルとなっています。
IT・テクノロジー分野の起業成功例

綱川 明美氏
綱川明美氏は、多言語対応AIチャットボット「Bebot」を開発・提供する株式会社ビースポークを設立した起業家です。
旅行中に現地情報を得られず不便を感じた体験から、外国人観光客が安心して旅を楽しめるサービスの必要性を実感し起業に踏み切りました。チャットでの問い合わせ対応から着想を得てチャットボットの開発を進め、ホテルを皮切りに、成田空港やJR東日本、自治体、政府機関などへ導入が広がっています。
特にコロナ禍や災害時には、緊急時の情報提供ツールとしても高く評価されました。社会のニーズを的確に捉え、スピード感を持って事業を拡大した成功例です。
小川 嶺氏
小川嶺氏は、大学在学中に働きたい時間だけ働けるマッチングアプリ「タイミー(Timee)」を立ち上げた起業家です。
飲食店でのアルバイト経験から「忙しい時間帯だけ人手が欲しい企業」と「短時間だけ働きたい個人」がうまく結びついていない課題を実感し、これをテクノロジーで解決するサービスを開発しました。リリース後は飲食・小売り・物流へと利用業界が急拡大し、コロナ禍以降は需要がさらに増加しました。
創業数年で数百億円規模の企業へ成長し、日本の労働市場に新しい働き方を提示した小川氏は、学生時代の課題体験を起点に行動力と改善のスピードで起業した成功例です。
トビアス・リュトケ氏
ドイツ出身のトビアス・リュトケ氏は、大学を中退後、プログラミングの見習いとしてキャリアをスタートし、世界を代表するeコマースプラットフォームを立ち上げた世界的な起業家です。
プログラミングやウェブサイトのデザインを学んだ後、20代前半でスノーボードのECサイトを立ち上げますが、その過程で、当時のeコマース向けソフトウェアが小売業経験のない人々によって設計されていることに不満を抱きます。そこで、より使いやすく実用的なソフトウェアを自社のために開発しましたが、そのシステムが持つ大きな価値に気づき、「Shopify」を創業して世界中のEC事業者に向けてシステムの提供を始めました。
一小売事業者からECプラットフォームの世界的企業へ成長したトビアス氏の事例は、自身が感じた不満や課題から柔軟に事業転換した成功例です。
小売り・製造分野の起業成功例

勝 友美氏
勝友美氏は、オーダースーツブランド「Re.muse(レミューズ)」の代表を務める女性起業家です。
営業職としての経験を活かし、男性向けオーダースーツの世界に挑戦し、資金や人脈も乏しい中、ひとりで営業から採寸、納品までを手がけながら信頼を積み重ねました。デザイン性と着心地の良さにこだわったスーツは著名人にも愛用され、ブランドの地位を確立しています。
情熱と行動力で道を切り開く姿は、女性起業家の新しいロールモデルとして注目されています。
高橋 和義氏
高橋和義氏は、会社員として働く傍ら、副業としてフランチャイズのビジネスに挑戦して起業しました。
選んだのは、低資金で始められる移動販売型のポップコーン事業「ジェリーズポップコーン」でした。開業初日から予想を超える売り上げを記録し、わずか2日後には本業を辞めて独立を決意しています。地域のイベントや商業施設などで展開しやすく、再現性の高い副業モデルとしても注目を集めています。
副業から脱サラを実現した好例として、多くの人の起業意欲を後押ししています。
深津 チヅ子氏
深津チヅ子氏は、高齢女性向けファッションブランドである「FUKUFUKU-YA」を立ち上げた起業家です。
きっかけは、88歳の母の洋服選びに困ったことでした。加齢による体型の変化や好みを反映した服が市販では見つからず、「ないなら自分で作ろう」と2020年に起業を決意しました。80〜90代女性の体型に合わせた立体裁断、着脱のしやすさ、明るい色彩などには、「もう一度お母さんを輝かせたい」という想いが込められています。
高齢者施設や在宅介護の現場でも支持され、2022年には東京シニアビジネスグランプリ最優秀賞を受賞しました。高齢者のQOL向上に寄与する新たな市場を切り開いた起業成功例です。
社会課題・サステナブル分野の起業成功例

臼井 宏太郎氏
臼井宏太郎氏は、介護業界の現場で感じた違和感と課題意識をもとに、福岡県で地域密着型の介護事業所「我が家」を設立しました。
従来の「大変で辛い」という介護職のイメージを変えるため、職員が誇りを持って働ける職場作りを徹底しました。利用者だけでなく、スタッフの幸福度も重視する経営スタイルは業界内外から注目されています。介護という社会的に重要な分野で、働き方や価値観を見直す取り組みは、サステナブルで人間味のあるビジネスモデルの好例といえます。
和田 幸子氏
和田幸子氏は、家事代行マッチングサービス「タスカジ」の創業者であり、主婦の働き方と家事の社会的課題に挑んだ女性起業家です。
自分が共感できる課題と事業が結びついていないことが原因で副業に失敗した経験から、自身が感じている困りごとをベースに、「家事を仕事にしたい人」と「家事を頼みたい人」をつなぐプラットフォームを立ち上げました。利用者の多様なニーズに対応しながら、働く女性や共働き家庭の家事負担軽減に大きく貢献しています。
生活に密着した社会課題に挑んだその姿勢は、多くの共感と支持を集めています。
谷本 肇氏
谷本肇氏は、地球環境課題に挑むディープテック企業、株式会社ガルデリアを創業した起業家です。
ガルデリア創業前にも2社起業して失敗も経験していた谷本氏は、世界的なニッチ市場を探していました。そこで出会ったのが、貴金属吸着能力や高い環境適応性のある微細藻類「ガルディエリア」です。
ガルディエリアは、鉱山からの金回収時の水銀被害解決、CO₂削減、たんぱく質危機の解決といった応用が期待されるもので、研究者に積極的に声を掛けて共同研究の道を探る産学連携型のアプローチをとることで技術の社会実装を推進しています。
元戦略コンサルタント・連続起業家としての経験を活かし、環境問題にインパクトを残す革新的ビジネスを展開している起業成功例です。
地域ビジネス・地方起業の成功例

嶋田 俊平氏
嶋田俊平氏は、山梨県の過疎地域・小菅村を舞台に「NIPPONIA 小菅」を創業して地域再生プロジェクトに取り組んでいます。
このプロジェクトでは、古民家をリノベーションして村全体を一つのホテルとして運営することで、行政や地元住民、民間企業が連携し、空き家問題や地域経済の低迷といった課題を観光資源へと転換しました。地元の食材や自然、文化を活かした滞在型観光が国内外から注目を集め、地方創生の先進事例として高く評価されています。
地域に根ざした持続可能なビジネスモデルとして、多くの自治体や起業家の参考となっています。
中村 朱美氏
中村朱美氏は、京都で「1日100食限定」の飲食店「佰食屋(ひゃくしょくや)」を立ち上げた女性起業家です。
売り上げよりも働きやすさと生活の質を重視し、社員が毎日17時に帰れる職場環境を実現しました。食品ロスの削減や人材定着率の高さなど、社会的課題にも配慮した経営スタイルは、多くのメディアや企業から注目されています。
地域の食材や文化を活かした店舗運営と、利益と幸福のバランスを両立させたビジネスモデルは、地域ビジネスの新しいかたちとして高く評価されています。
まとめ
起業家の人生には、驚くほど多様な背景と選択があります。学生や社会人、地方在住、子育て中、0円起業、そのどれもが成功への道を切り開いてきました。本記事で紹介した15人のストーリーは、「特別な才能がないと起業できない」という思い込みを静かに覆してくれます。
大切なのは、完璧な計画よりも「最初の一歩を踏み出す勇気」と「続けながら学ぶ姿勢」です。成功例を自分の物語を描き始めるきっかけとして活かしてみてください。
起業例に関するよくある質問
起業で成功した人に共通することは?
起業で成功する人には、いくつかの共通する特徴があります。課題を発見し独自の解決策を生み出す創造性や、変化を恐れず必要なリスクを取る行動力、成果が出るまで粘り強く努力し続ける継続力などがあげられます。また、失敗を改善につなげる姿勢や、顧客の声を柔軟に取り入れることも成功者に共通しています。
サラリーマンの起業の成功例は?
サラリーマンとして働きながら起業した成功例には、会社員として働きながら副業から起業に挑戦した高橋和義氏や、企業内の新規プロジェクトを担当したことから独立へとつなげた井上佳央里氏などがいます。
女性起業家の成功例は?
- 井上 佳央里:Radiotalk株式会社/音声配信サービス「Radiotalk」
- 蜂谷 詠子:株式会社BEEVALLE/女性向け起業支援・コワーキング事業
- 綱川 明美:株式会社ビースポーク/多言語AIチャットボット「Bebot」
- 勝 友美:Re.muse/オーダースーツブランド
- 深津 チヅ子:FUKUFUKU-YA/高齢女性向けファッションブランド
- 和田 幸子:タスカジ/家事代行マッチングサービス
- 中村 朱美:佰食屋/1日100食限定の飲食店
成功した起業例から学ぶことが重要な理由は?
成功した起業家のストーリーには、実践的なヒントが多く含まれているからです。限られた資金をどう調達したか、逆境をどう乗り越えたか、どのようにターゲットへ商品を届けたかなど、小規模ビジネスでも応用できる学びが得られます。成功例を知ることで、起業への理解が深まり判断の参考にもなります。
起業の成功率は?
中小企業庁の調査によると、起業の成功率は約80%です。これは創業後5年を経過した企業の生存率で比較的規模の大きな企業を対象としたデータを基にしているため、実際はもう少し低い可能性がありますが、起業の成功率は高いといえるでしょう。
文:Takumi Kitajima





