近年、子育てと仕事を両立させたい女性が起業を選ぶことが増えてきています。
仕事の時間と、子供や家族と過ごしたり家事をしたりする時間などを、ある程度自分で調整でき、子供の病気や学校の都合などにも比較的対応しやすいことは、ママ起業で得られるメリットの一つです。
この記事では、子育てをする女性の起業にはどんな業種が向いているかや、起業からビジネス継続のポイント、日本のママ起業家の例をご紹介します。子供を育てながら起業を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
ママ起業におすすめの業種

子供と関わる時間をおろそかにせず、スキマ時間を活用して家庭と仕事を両立させたいママの起業におすすめの業種や職業には以下のようなものがあります。
- ネット販売:通常の販売形態の他に、ドロップシッピングや無形商材の販売であれば仕入れや在庫管理の手間も必要ありません。
- ハンドメイド販売:作品をハンドメイド販売サイトなどで販売できます。ママとしての経験を活かし、子供の衣料品や学校・保育園などで使用するグッズを作るのもおすすめです。
- イラストレーター:仕事を受注する以外にも、イラストや絵はオンデマンド印刷などでグッズとして販売することもできます。
- アフィリエイト:商品やサービスを紹介して報酬を得るアフィリエイトは、スマホやパソコンなどがあれば0円起業も可能です。
- オンライン講座:zoomなどで得意なことを指導するオンライン講師なども、スキルや資格のあるママの起業アイデアとしておすすめです。リアルタイムの開講が難しい場合でも、Udemyなどを使えば講座販売もできます。
他にも、以下のようなポイントのいずれかまたは複数が当てはまる業種であれば子育て中でも無理なく起業できるでしょう。
- 時間の融通がきく
- 準備するものや必要な資金があまり多くない
- 自宅でできる(通勤時間がない)
- 特別な資格が必要ない
ママ起業で成功するコツ

自分の好き・得意な分野を活かす
業種を選択するときに、自分の好き・得意な分野を活かすことは、事業を継続するのに重要なポイントです。ママ起業家として行き詰まりを感じたときにも、好きなことや得意なことであればビジネスを継続していく大きな原動力となるはずです。
ただし、自分の好きなことや得意なことだけを考えてもビジネスとして成り立ちません。友人や親しい人に評判が良いものでも、実際の商品としてニーズがあるとは限りません。売り出そうとしている商品やサービスが売れるかどうかを客観視するために、市場調査やターゲットのニーズや好みの調査を行いましょう。あまり需要がなさそうであれば、商品やサービスの変更やターゲットの変更などを検討しましょう。
得意なことと需要のバランスが取れたビジネスで起業するのが成功のコツです。
小規模に始め、資金計画も明確にする
子供の成長に伴い生活リズムや環境が変化する可能性のあるママ起業では、まずはビジネスの継続を目標に、副業としても可能なレベルで無理なくできる範囲から始めるのも成功のコツの一つです。
最初は1日に数時間程度の作業にする、決めた金額より高額の仕入れはしないなど、小さくスタートすれば、計画がうまく進まなかったときの軌道修正も容易です。軌道に乗った後も、急激に事業拡大せず少しずつ成長させていくとよいでしょう。
また、必要な機材や材料費、人件費などの経費がかかる場合は価格を調べ、月ごとや年間でどれくらいの売り上げがあればビジネスを継続できるか試算して、目標を立てることも大切です。
自己資金でビジネスを立ち上げるのが難しいのであれば、アントレプレナーや女性向けなどの公的な補助金や助成金制度の活用を視野に入れましょう。補助金には以下のようなものがあります。
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新規開業・スタートアップ支援資金(日本政策金融公庫)
新しく事業を始める人または創業からおおむね7年以内の人が受けられる融資です。女性経営者は特別利率で利用でき、最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)の融資が受けられます。 -
両立支援等助成金(厚生労働省)
仕事と育児・介護の両立を支援するための助成金制度で、個人事業主も利用できます。育児休業等支援コースや柔軟な働き方選択制度等支援コースなどがあり、子育てしながら働くための環境作りに活用できます。 -
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(独立行政法人中小企業基盤整備機構)
革新的な新製品・新サービスの開発・海外需要開拓を目的とした設備投資・システム導入を行う際に活用できる補助金です。製造業以外にも商業・サービス業など幅広い業種が対象で、補助上限額は該当する枠や従業員規模により違いますが、製品・サービス高付加価値化枠の従業員規模1~5人の場合、750万円となっています。 -
IT導入補助金(独立行政法人中小企業基盤整備機構)
中小企業や小規模事業者がITツールを導入して労働生産性を向上できるよう支援する補助金です。一例として在庫管理ツールや決済ソフトなどを導入したい場合、通常枠であれば5〜450万円の補助が受けられます。 -
小規模事業者持続化補助金(全国商工会連合会)
小規模事業者が経営を見直し、経営の継続を目指した販路開拓や生産性向上の取り組みを支援する制度です。新規事業や創業後3年以内の場合は「創業型」で、最大250万円の補助を受けられます。ただし、商工会・商工会議所地区によって申請先が違うので注意が必要です。
優先順位をはっきりさせる
ワークライフバランスを大事にしたくて起業したのに、仕事がどんどん忙しくなり、子供や家族に関わる時間が削られていくなどということになっては本末転倒です。そのため、自分はまず何を優先したいのかを明確にしましょう。
その上で、重要な仕事の時間は集中して取り組み、優先順位の低いものは切り捨てる、どうしても自分でなければならない仕事以外は他の人に託すなどして子供と関わるために必要な時間を確保し、私的な時間は仕事のことを一旦脇に置いて、気持ちを切り替えるようにしましょう。
あるいは子供の世話をしながら並行して仕事を進めるのに適した環境を整えるなど、自分にとって一番よい仕事の仕方を見つけていくことが重要です。
家族の理解とサポートを得る
ママ起業には家族の理解とサポートは不可欠です。できる限り事業計画や目標、現時点での達成度を家族と共有し、協力してもらえる体制を整えましょう。
子供の送り迎えや家事などの役割分担を具体的にすることで、家族も自分も行動しやすくなります。家族のサポートが得られれば時間にも精神的にも余裕が生まれ、事業や家庭にとってより良い時間の使い方ができるようになります。
仕事や生活についてコミュニケーションをとり協力し合うことによって、家族との信頼関係強化にもつながるでしょう。
ビジネスを立ち上げた後も常に情報収集をする
自分の商品・サービスがニーズに合ったものか、その時々でどのようなニーズの変化があるのかを日々調査・分析し、分析結果にしたがって商品やサービスに変更を加えていきましょう。
また、他の起業家や事業主との情報交換も大切です。新たなビジネスアイデアや仕事と子育ての両立に役立つ情報が得られたり、自分がまだ直面していない問題についてメンターとなる先輩ママ起業家から話を聞き、事前に対策ができたりする可能性もあるでしょう。
ママ起業で成功した例5選
1. 和田幸子さん:ワーキングマザーならではの悩みから起業
和田幸子さんは、女性のワークライフバランスを実現するために家事代行マッチングサービス「タスカジ」を創業しました。
フルタイム勤務しながら家事・子育てを担うなかで、家事負担の大きさや外注するハードルの高さのせいで、女性がキャリアアップを目指したり自分の時間を持ったりすることがこの上ない贅沢になっていることに課題を感じていました。そこで、主婦の家事負担と働き方の課題解決のために起業し、利用者の多様なニーズに対応しながら、働く女性や共働き家庭の家事負担軽減に大きく貢献しています。
2. 長濱晴美さん:趣味のハンドメイドで起業
兵庫県でハンドメイド作品の委託販売やワークショップを行う「はんどめいどの森」を運営する長濱晴美さんは、40代で趣味として始めたハンドメイドをきっかけに、ママ起業に成功しています。
イベントでの販売を重ね、作家仲間や人とのつながりをつくりながらお店を持つという夢を追いかけ、テナントや頼れるアドバイザーとの出会いを経て店舗をオープンさせました。
同じママ作家の作品を販売したり、起業や制作のアドバイスを行ったりするなど、ママ作家・ママ起業家ならではの視点で子育て中の女性や社会に貢献しています。
3. ヒビノケイコさん:ママとしての優先順位を大切に起業
現在、創作活動や講演・執筆などを中心に活動しているヒビノケイコさんは、妊娠をきっかけに夫の故郷である高知の山里に移住し、「仕事はつくればいい」という持論で起業したママ起業家です。
もともと好きだったお菓子づくりの腕を活かし、子育てと両立して無理なく働ける、オンラインの焼き菓子専門店というフードビジネスを始めました。母親としての視点を活かした安全で子供にも優しい味の焼き菓子は人気となり、その後カフェもオープンして全国からお客さんが来るなど事業は順調に成長していました。
しかし、忙しくなって子供との時間がとれなくなったことで、暮らしにおける優先順位を改めて見つめ直し、カフェは閉店して通販は人に任せるという柔軟な決断を下し、創作などの活動に移行しています。
4. 向井桃子さん:家族の手厚い協力を得て起業
向井桃子さんは、子供の疾患をきっかけにオーガニック製品を利用するなかで月経ディスクに出会い、生理中の選択肢を増やしたいという思いから、日本で初めて使い捨て月経ディスクの国内製造販売を行う株式会社MONA companyを立ち上げました。
3人の子供の育児と家事を夫と分担したり、母に具体的な要望を伝えて手伝ってもらったりと、頼れるところはすべて頼り、やらなくていいことは極力省くことで仕事と私生活を両立しています。
現在は製品を販売しながら、生理用品や起業についてのセミナーを開催する講師としても活動中です。
5. 川西真理子さん:仕事の経験もママとしての経験も活きる起業
川西真理子さんが立ち上げた18歳以下の子供がいるママ・プレママ限定のコミュニティ型オンラインITスクール「マミット」は、家事育児をしながら学ぶことの難しさを強く実感した経験を活かしたビジネスモデルになっています。
エンジニア経験とプログラミングスクール運営を経て独立した川西さんは、出産を機に女性やママ向けに講座をする機会が増えたことからママ向けのIT教育事業に着手しました。
少ない金額でサブスクできるため費用と期間を気にせず学習でき、実務経験もできる仕組みで、子育て中の女性のスキルアップを応援しています。
まとめ
母親という役割をこなしながらの起業は難しく、自分には到底無理だと思っている人もいるかもしれません。ですが現代では、ビジネスに関する情報収集もしやすく、家事・育児代行サービスや金銭的な支援も充実しているので、子供を育てながらの起業もしやすくなっており、アイデアやモチベーション次第で誰でもビジネスを始められます。
この記事で紹介した業種やコツ、成功事例を参考に、まずは副業としても可能な程度の小さな一歩から、ママ起業してみてはいかがでしょうか。
ママ起業についてよくある質問
ママ起業におすすめのビジネスは?
- ネット販売
- ハンドメイド販売
- イラストレーター
- アフィリエイト
- オンライン講座
ママ起業を支援してくれる制度や講座はある?
女性起業家やママ起業家を支援してくれる制度や講座は複数あります。例えば、日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は、女性経営者は特別利率で利用できます。また、ブルーコンパスのように女性起業家による女性の起業支援事業などもあるため、そういった事業で開催される講座などに参加するのもよいでしょう。
ママ起業で注意すべきことは?
ママ起業では、詐欺まがいの起業コンサルに注意する必要があります。家事・育児をしながらという限られた時間で効率的に起業したいと考える女性に魅力的なうたい文句で、内容と見合わない高額なセミナーや教材を売りつけてくることもあります。 コンサルを利用するときは家族や先輩起業家に相談したり、しっかりと情報収集したりするようにしましょう。
ママ起業を相談できるところはある?
起業の手続きや法律に関する内容は、行政書士と司法書士に、税務処理や会計事務については税理士に相談できます。各地域の商工会や商工会議所などでも起業に関する無料相談が実施されているほか、税務署では起業に関わる手続きや確定申告の記帳方法、法人税・事業税・消費税など税務に関することを無料で相談できます。
また、各地方自治体の創業支援セミナーが近隣で開催されている場合もあります。
ママ起業で成功した例は?
ママ起業で成功した例には、次のようなものがあります。
- ワーキングマザーならではの悩みから家事代行マッチングサービスを立ち上げた和田幸子さん
- 趣味のハンドメイドで起業し、同じママ作家の作品を販売したり、起業や制作のアドバイスを行うなど、ママ作家・ママ起業家ならではの視点で子育て中の女性や社会に貢献している長濱晴美さん
- 起業してからもママとしての優先順位を大切に事業の方向性を決めたり事業転換したりしたヒビノケイコさん
- 子供の疾患の悩みから自分の手がけたい商品に出会い、家族の手厚い協力を得て子育てとを両立している向井桃子さん
- ママとしての経験からママ専用オンラインITスクールを開設し、学びと子育てを両立したいママのスキルアップを応援する川西真理子さん
文:Tomoyo Seki





